スタジオパパパのパートナーとは?
スタジオパパパではパートナーとして専門家の方が在籍しており、様々なジャンルの勉強会、実務の相談、ワークショップ等を行っております。
子ども臨床心理士の橋本さんにインタビューを行いました!
今回はその中で、特に子どもたちの発達のことや、関わり合いなどの様々な相談で、パートナーとして協力していただいている橋本さんを、紹介を兼ねてインタビューさせていただきました!
臨床心理士とは?発達障がいとは?どこに相談した方がいい?などなど単刀直入に聞いてみました!
またスタジオパパパでは発達支援に関するサポートやイベント、相談会など随時行っております
藤ノ木:今日はよろしくお願いいたします!いい感じのアトリエですね。旦那さまが主宰しているんですよね。子ども向けのアトリエですか?
橋本さん:よろしくお願いします!はい、夫が講師を務めています。昼間は大人の方も来られます。土曜日は子ども向けもあるので、子どもから大人の方まで生徒さんがいます!
↑撮影場所でもある橋本さんの旦那さまが運営している「まくらのいきおい」
藤ノ木:そうなんですね!パパパと雰囲気がまた違うので面白いです。インタヴューをする前に、なぜアートスクールのパパパと、臨床心理士の橋本さんがパートナーになることになったのか、その経緯的なのをお話した方がいいですよね?(笑)
橋本さん:お願いします!(笑)
↑橋本さん
↑スタジオパパパ代表 藤ノ木
藤ノ木:スタジオパパパには小学生や幼児・未就園児が大体400人ほど在籍しています。いろんな子どもたちが思う存分制作してもらっていますが、中には支援が必要なお子さんや、診断が難しいグレーゾーンのお子さんなど多いのが事実です。パパパではそのようなお子さんでも一人一人が本気で楽しめる場所を提供しているのですが、よく保護者の方から「ウチの子、多動で大丈夫かしら・・・」とか、「ウチの子、将来が心配・・・」などを耳にする機会がとても多いのです。
心配しているのは子どもではなく、親御さんや保護者の方であって、子どもは逆にイキイキと生活しているパターンも多くて、これはパパパでサポートできる課題だなとまず感じました。
そして、僕たちの仕事は子どもを幸せにすることだけではなく、その家族までサポートすることが仕事ではないかなとも最近は感じていて、少しでもそのようなお子さんをお持ちの過程において正しい知識やパパパならではのサポートがしたいと思い、橋本さんにお声がけしたのが大きな理由です。
橋本さん:ありがとうございます。
藤ノ木:また、もちろんスタッフに関しても、発達支援が必要な子どもとコミュニケーションする時に、心がけることや、知識などがあれば、より深いところで意思疎通ができると思いますので、橋本さんカリキュラムのスタッフ向けの研修や勉強会なども実施していきたいと考えています。
橋本さん:子どもと関わる上で「絶対これが正しい!」という方法はないと思いますけど、コミュニケーションにおいて選択肢が増えると接し方や考え方が変わることがありますよね。
藤ノ木:そうですよね。ま、前置きはこんな感じで・・・(笑)では早速、橋本さんをたくさん知るための質問を用意してきました!準備はいいですか?笑
橋本さん:はい(笑)お願いします。(笑)
藤ノ木:職業を教えてください?
橋本さん:臨床⼼理⼠・公認⼼理師です。
藤ノ木:仕事を始めてから何年経ちますか?
橋本さん:11年です。
藤ノ木:臨床⼼理⼠ってどんなお仕事ですか?
橋本さん:臨床⼼理⼠とは臨床⼼理学の知識にもとづく知識や技術を⽤いて、⼈ の”こころ”の問題にアプローチする”⼼の専⾨家”です(⽇本臨床⼼理⼠資格認定協会HP より) 。 床⼼理⼠が働いている地域は様々で病院、学校、司法機 、福祉施設などがあります。⼼理⼠というとカウンセリングをする仕事だというイメージが⼀般的強いと思いますが、カウンセリングといった個別⾯接以外に⼼理検査の実施、他職種との連携、地域⽀援、研究・ 査など仕事内容も多岐に渡っています。
藤ノ木:どのような活動を行ってきたんですか?
橋本さん:私⾃⾝は⼤学院を卒業してから、4年ほど教育センターの相談員、⼩中学校のスクールカウンセラーをしていました。⼦どもたち、保護者の⽅の相談を受け、教員の⽅と⼀緒に⼦どもの抱える問題をサポートする仕事をしてきました。その後は、虐待など様々な事情によって家庭では暮らせない⼦どもたちが暮らす、児童養護施設で勤務しています。
藤ノ木:なぜ臨床⼼理⼠になろうと考えたのですか。
橋本さん:⾼校⽣の頃に⾃分⾃⾝が挫折を体験し、⽣きづらくなった時に⼼理学、精神分析学というものがあることを知り、その世界に魅了されました。⼼理療法に関わる医師との出会いが⼤きかったです。ただ、すぐに臨床⼼理⼠になろうとは考えず、⼤学時代は基礎⼼理学という、実験などをメインとした⼼理学を学んでいました。
藤ノ木:実験!?人体実験・・・!?
橋本さん:ネズミなどを使った脳科学的な実験なので、コワイことはしませんよ(笑)
藤ノ木:あ、よかった(笑)
藤ノ木:何⼈の方とカウンセリングを行ってきたんですか?
橋本さん:数えたことがないのでわかりません。かなりの数になるかと思います。⾯接回数とすると 1⽇4⼈の⼈と⾯接をしていた場合、4⼈×5⽇×4週×12ヶ⽉ 11年なので。。
藤ノ木:だいたい100億人ぐらいですね・・・
橋本さん:世界人口超えてますね・・・(笑)
藤ノ木:なぜ臨床⼼理⼠の仕事は必要だと感じますか?
橋本さん:臨床⼼理学は個⼈個⼈の内側にあるこころや視点を⼤事にする学問です。人間は⽣きる上で社会のルールを守り、他者との関係を築きながら外側にある世界とも関わる必要があります。一方で、この内側と外側の世界のバランスが悪くなった時に様々な問題が⽣じてくることがあり、臨床⼼理⼠がその問題を整理し、問題を解決するお⼿伝いをする必要が出てきます。しかし、いずれこの仕事がなくても良くなる社会になれば、それはそれでとても素敵なことだと思います。
藤ノ木:資格があるのとないのではどう違いますか。
橋本さん:個⼈として⽀援をするのではなく「臨床⼼理⼠」という専⾨職として⽀援をしている自覚を持つことができます。これは⾃分の仕事の責任を背負いながら、相談者と⾃分の線引きができることでもあります。また、ネットワークや研鑽する場もあるので常に広い視点を持ち、⾃分流にならずにより適切な⼼理⽀援を学び続けることができます。また、資格がなくても個⼈で開業はできますが、病院、学校、福祉施設等、他職種と共に働く場所は資格がないと就職できません。
藤ノ木:カウンセリング後に相談者や子どもにどんな変化がありますか。
橋本さん:⼦どもは主に遊びを使ったプレイセラピーを実施することが多いです。⼤⼈の「⾔葉」は⼦どもにとっての「遊び」とも⾔われており、⼦どものセラピーでは⼦どもの遊びを通してその⼦の⽣きている世界を⾒せてもらい、様々な気持ちを受け⽌め、こちらも受け⽌めたことを伝え返す、ということが⾏われます。⼦どもたちは皆、⽣来⾃ら成⻑をする⼒を持っていますが、その⼒が何かによって阻害されている状態になると⽇常の中で問題が⽣じます。何によって阻害されているのかをセラピーの中で考え、遊びの中でその問題に取り組んでいくことで成⻑する⼒が復活していくようになります。
藤ノ木:子どもは本来「⾃ら成⻑」力を持っている。パパパも大切にしているのは、その子の「できる力」を信じることを土台にして、コミニケーションをしています。なるほど、分かりやすいです。
藤ノ木:⼼理⼠以外にも何かお仕事をされてますか?
橋本さん:⼦どもの絵画教室の先⽣をしています。
藤ノ木:発達障害って何ですか?また発達障害にはどんなものがありますか?
橋本さん:発達障害には、自閉症スペクトラム症、注意⽋如・多動症(ADHD)、学習障害、チック症、吃⾳などが含まれます。⽣まれつきの脳の働き⽅の違いにより、幼少期から⾏動⾯や情緒⾯に特徴がある状態を⾔います。( 厚⽣労働省みんなのメンタルヘルスより)
藤ノ木:社会の中においての発達障害とは何ですか。
橋本さん:発達障害の話をすると「昔はそんな⼦はたくさんいたけどそれが普通だった」と仰る⽅が多くいます。「発達障害」という診断名ができたために「発達障害」の⼈が増えている、という⾒⽅もあります。私としては「発達障害」はその⼈⾃⾝だけの問題ではなく、その⼦がいる環境との関係の中で⽣じているように思います。⽣まれつきの脳の働き⽅が多くの⼈と異なっていたとしても、環境との関係の中で困り感がなければ「発達障害」として意識されないこともあります。
そう考えると「発達障害」と⾔われるものは時代や⽂化が変わると「発達障害」とは呼ばれなくなるかもしれない、と言えることもあります。ただ、だからと⾔って「発達障害はない」ということはできません。⼤事なことは発達障害であってもなくても、1 ⼈1 ⼈の困っていることや⽣きづらさについて丁寧に考えることだと思います。
藤ノ木:めちゃくちゃ分かりやすいです。要は、発達障害は「その子の障害」ではなく、「その子とその周りの社会や環境の間にある障害」ということですね?
橋本さん:その通りです。
藤ノ木:そう考えると、その子をどうにかしよう、と考えるのもありかもしれないけど、その子の周りの環境を変えたり改善したりすることでも、その子の生きやすさに関係するということですね。この考え方は大切ですね。
藤ノ木:保護者の方が⼦どもの問題で何かしらの不安がある場合はどこに相談したら良いでしょうか?またその場所それぞれの特徴はありますか?
橋本さん:⼦どもが⼩学⽣以上であれば学校にいるスクールカウンセラーに相談することができます。また、公⽴の教育相談室、教育センターという場所があり、 保護者の方の相談や⼦どものプレイセラピーを実施しています。これらは無料で相談ができます。
こころが関係している問題の場合は児童精神科もあります。児童精神科は予約が埋まっていることも多く、受診するまでに時間がかかることがあります。診察は通常病院に⾏く時の費用と同じですが、⼼理検査、発達検査、セラピーなどを実施する時は保険適⽤でない場合もあります。医師は薬を処⽅できますが、 臨床⼼理⼠はできないので、薬が必要な場合は病院に⾏く必要があります。
藤ノ木:臨床⼼理をやっていてよかった点を教えてください。
橋本さん:⼈に関わる仕事なので毎⽇新鮮で飽きることがありません。確実な答えがないことが多く、いつも悩みますが、常に新しいことを学ぶことができ、⾃分も成⻑できます。⼦どもの成⻑を近くで⾒守ることができ、人間の⾯⽩さを⽇々感じられます。
藤ノ木:どの保護者に対して一貫して⾔えることはありますか。
橋本さん:子育て中であっても、⾃分⾃⾝を⼤切にする感覚を⼤事にして欲しいです。フライトアテンダントが緊急時に酸素マスクの使い⽅を乗客に説明する例があります。フライトアテンダントは緊急時にまず、⼤⼈の乗客がマスクを付けてから⼦どもにマスクを付けるよう⾔います。保護者⾃⾝が⾃分をケアしていないと⼦どもを助けることはできない、というわけです。また、「⾃分が持っていないものは⼦どもや他者に与えることはできない」とも⾔われており、⼦どもに何かを求める時、⼦どもに期待する時にふと⽴ち⽌まり、「⾃分にとってはどうか」と考えてみるのも⼤切なことだといつも思います。
藤ノ木:フライトアテンダント、めちゃいい例えですね。その通りだと思います。
藤ノ木:最後の質問です!なぜスタジオパパパのアドバイザーにご協力をしていただけたんですか。
橋本さん:私は⼼理⼠として働きながら作品制作をしています。⼦どもの頃から絵を描くことが好きで美⼤を⽬指していました。⾃分にとってもアート表現はとても⼤事なものです。⼦どもに関わる仕事をしながらアート活動をしている、というところから⼈の繋がりの中でパパパを知りました。先⽣が決めたことをするというよりも、⼦どもが⾃分にしっくりくるものを選び、⾒つけ、挑戦し、取り組んでいくというパパパで起きているプロセスはセラピーの中で⼦どもがしていることにも似ていると思いました。⼤⼈はついつい⼦どもに指導したくなったり、⾏動を制限したくなったりしますが、パパパの先⽣は可能な限りそれをせずに⾒守っていて、⼦どもを信頼している場だと⾔えます。そういった場を提供するということはとても難しいことなので、先⽣たちの可能性、アートの⼒を感じました。
藤ノ木:そのように仰っていただき、嬉しいです!ありがとうございます。
橋本さん:こちらこそ、たくさんの質問をありがとうございました!保護者の方向けの発達支援相談会や、先生向けの勉強会、日頃の子どもたちと接する上で悩む場合の相談など、パパパを私の視点でサポートできたらと思います。
藤ノ木:これからも、どうぞよろしくお願いいたします!今日はありがとうございました!
橋本さん:ありがとうございました!
↑橋本さんの作品